夫婦と子ども3人の森山家の居間は、いつも和気あいあいとした雰囲気で満ちていた。大黒柱の父親、和彦(竹野内豊)の稼業は空き巣泥棒。今日も彼は、食卓 で団らん中の家族にその日の“稼ぎ"を報告し、妻・皐月(松雪泰子)はねぎらいの言葉をかけた。皐月の仕事はというと結婚詐欺で、彼女も時々、新たなター ゲットとの進展を報告して「これからどう騙すか」のアドバイスを仰ぎ、家族みんなはあれこれと知恵を寄せるのだった。
長男・淳(坂口健太郎)は大学に行かずに働きはじめ、長女の明日香(黒島結菜)は中学3年生で高校受験を控えており、末っ子の次男・隆史(池田優斗)は ゲーム好きの小学4年生。なかでも淳は、現金以外のものを盗ってくれば「我が家にとって危険!」と父親をたしなめるシッカリ者だ。印刷所の親方、和彦のムショ仲間だったゲンジ(國村隼)のもとでパスポート偽造の腕を磨き、一流偽造職人を目指していた。
実は、森山一家に血の繋がりはない。虐待、性暴力、DV…それぞれが重い過去を背負い、形だけの家族から逃れ、巡りあわせで出会った5人が偽りの名前で家族を装い、身元がバレないよう肩を寄せ合って暮らしてきた。 他人同士だが、いつしか本当の家族のようになっていく5人は、この場所こそが安住の地となっていた。だがある日、母がターゲットとして付き合いを進めていた 不動産王の息子ミツル(村本大輔)に、皐月の計画がバレてしまう。何を隠そう、この男の正体は同業の結婚詐欺師!自分がカモにされていたことに激昂したミツルは、皐月を監禁し、和彦のケータイに連絡を入れ、身代金として1千万円を銀行口座に振り込むよう求めてきた。
駆け引きの結果、翌日昼、皐月の身柄との直接交換にもちこむ。カネは即席で、淳が用意した。ゲンジの印刷所で、偽札の1千万円を作ったのだ。和彦は子どもたち3人を連れて、指定された場所、工事中の雑居ビルへと向かった。明日香と隆史を車に待機させ、和彦は淳と建物の中へ。そして和彦は目の前の“家族"を 守るため、ある決断をするのだった・・・。